古民家ギャラリーうした+古本カフェ便り

読書ブログなど、自分の興味のあることを書いていきたい。

小説の紹介

昭和の青春:都会の憂鬱 佐藤春夫  

都会の憂鬱 佐藤春夫 新潮文庫 昭和三十一年 とても汚れた街角の隅に佇立している草臥れた 男を連想させるような作品。 自然主義の作品を勉強し二千円(当時)の大金を経験 の為に遣ってしまったが、その渚山と云う男のやろうと していたことは時代の流れで…

腐った臭いの殺戮:限りなく透明に近いブルー 村上龍

講談社文庫 1978年 2009年に新装版になったのを拝読した。でも、 この装丁、色が濃いブルーで全然透明に近いブ ルーじゃないじゃないか。 高校一年の時に読んで衝撃を受け、以来、二十年 余り龍氏を追い掛けることとなった端緒の本だ。 女の子は大抵…

古本屋の出会う珍事件:猫の縁談 出久根達郎

中公文庫 1991年 短編集「猫の縁談」表題作。猫のじいさんと云う 猫を引き取ってくれ、蔵書と一緒に、というじい さんが巻き起こす騒動を描いた短編。 珍しい棟方志功の本と引き換えに猫の面倒を見てくれ、 と云い出し、その果ては、その猫じいさんは泥…

ナルコレプシー的混沌による短編:復活 色川武大

「虫喰い仙次」所収。 1986年 こういう短編は、一気読みしたほうが正解 なようだ。虫喰いみたいに読んだせいで、 元々解らない文章が一層分からなくなっ てしまったようだ。 どうやら、祖父が生き返った幻覚が視えていて、 それがどうやら威張ったりする…

文豪による実体験、あるいは、創作的虚偽?:野火 大岡昇平

こういう古い本をディグってると、やはり、 大きな発見がある。それは、人生と云う歴史 であり、それは、決して見逃せないものだ。 ぼくは、文章修行だと思って、このブログ を運営しているが、と云っても、ただ、ア ップしているだけだが。 今日のお作品は…

長崎出身の作家の遺作短編:本盗人 野呂邦暢

「素敵な活字中毒者」所収。 昭和五十三年 この野呂氏と云う人は残念なことに43歳で 亡くなっている。長崎生まれで、小説にも長崎と云う ワードが出て来る。「草のつるぎ」で芥川賞を受賞さ れている。「草のつるぎ」は読了済み。この短編は 「野性時代」…

お笑い・考+蜆(しじみ) 梅崎春生

ぼくの考えるとこ、お笑いっていうのものは 差別を笑う、っていうのは、定説になっている と思うんだけど。ぼくは差別に嫌悪感を抱いてお り、いまのお笑いのあげあし取りみたいな笑いは あまり好かんね。そういうことがお笑いのひとつ の終焉の原因でもあり…

黒猫ジュリエットの話 森茉莉

中公文庫 「奇妙な味の小説」所収。 牟礼魔利(むれ まりあ)とは森茉莉その人 の事なのだろう。魔利の飼っている黒猫が主人 魔利について語っている。 なんかぼくは勝手なイメージではゴスロリ風の 衣装に身を包んでいるといった感じだが、フランス 好きな…

手品師  吉行淳之介

中公文庫 「奇妙な味の小説」所収。 この短編は山田詠美氏・編の「せつない話」の巻頭 に載っている話として一読している。 ストーリーなどは重複するので、避けるが、想った ことなどは似たような感じだった。 思い込んだら百年目の童貞の19歳の暴走気味…

暗い海暗い声 生島治郎

中公文庫 この4pばかりの短編。船の上で幽霊のような 男が、実は幽霊ではなく、話しかけた男が幽霊。 片腕なく、海に身をやつした男であったという。 何となく、都会的で、世慣れた感じがする。 それでも、自殺してしまった、というんだから、 なんとも遣る…

勝負師  近藤啓太郎

中公文庫 「奇妙な味の小説」所収。 碁の勝負の世界を描いた短編。坂田というのが いったい誰なのか、碁に詳しい人からしたら、 そんなことも知らないのか、と言われそうだ。 坂田の勝負へのこだわりは近藤氏に見に来てもらう、 という一点にあるようであり…

奇妙な読後感:思いがけない旅  河野多恵子

「奇妙な味の小説」所収。 河野氏の作品を初めて拝読したが、プロットは いささか難しく、後半は良かったが、前半は良く 分からなかった。文章もあまり分かり易い、す っきりとした文章とは違うようだ。読後感は確かに 奇妙な感じがした。実に奇妙だ、と呟き…

天皇陛下万歳:召集令状  小松左京

中公文庫 1970年 「奇妙な味の小説」所収。 左京氏と言えば、「日本沈没」のSF小説で有名で、 ディストピア小説だと思われる。 1960年代の日本で、20代の若者に突如、 赤紙が来て召集される日に、突如、この世から 消えてしまう。という事件が頻…

見事なまでのエロさの文学的処理:さかだち 柴田錬三郎

「奇妙な味の小説」所収。 と、短編小説を16編収めた、この「奇妙な味の 小説」をみていこうという趣向なのだが、みっつ めがこの「さかだち」。 柴田錬三郎と言えば、眠狂四郎シリーズだが、これは それとはまったく違う、徴兵の赤紙の来た男が、死ぬ の…

狂気の狭間:秘密   安岡章太郎

中公文庫 「奇妙な味の小説」所収。 吉行淳之介・編 勝鬨橋(かちどきばし)に出たんである。 あまりにも巨大なあれが。 「蛸(たこ)」である。その大蛸は街中まで進出し、電話 ボックスに逃げ込んだ僕をさえ襲って来るのである。しかし、 そのことについて…

たまらん暑さ:暑さ 星新一

中公文庫 「奇妙な味の小説」所収。 吉行淳之介・編 とても暑い風もない日、交番にひとりの男が 自首してくる。 暑さがたまらないのだそうで、子供の頃から アリから始まり、カナブンを殺し、カブトムシ そして、昨年は猿を殺してしまったそうだ。 いや、今…

焚書するディストピア小説:華氏451度 新訳版 レイ・ブラッドベリ

伊藤典夫・訳 ハヤカワ文庫 1953年 この本は僕には珍しく蔦屋で新刊本で買い求めた。 この本は訳が新しい方がよかろう、という判断である。 旧訳はどうやら、やはり、かなりマズいらしく、読めた 代物ではないようだ。 この華氏451度は紙の自然発火す…

やりチンでさげチンの「僕」の冒険記:ダンス・ダンス・ダンス(下) 村上春樹

集英社文庫 1988年 30年くらい前に、飛ばし読みしたが、今回はじっくり と読んだ。ドルフィン・ホテルはいるかホテルと呼ばれ、 羊男は結局、何処かに行ってしまう。そして、ハワイ。 ハワイだ。ハワイなんてディズニーランドと似たり寄ったり だ、と…

カフカ的迷宮:ダンス・ダンス・ダンス(上) 村上春樹

講談社文庫 1988年 一度、終盤まで読んだのだが、俳優とのくだりでほ っぽりだしてしまい、一か月寝かせて、また、上巻 を最後まで読み通した。警察で拘留されて、昨夜 のことについてつらつらと尋問されるカフカ的な袋 小路と拷問と主人公の読んでいる…

生きている本:砂の本 ホルヘ・ルイス・ボルヘス

篠田一士・訳 集英社 1975年 砂の本とは始めもなければ、終わりもない本 のことだという。 この本をどう評せばいいのだろうか。 誰も近づけない場所に近づくことなのかも しれない。 単純な文体で誰にでも書けて理解出来るもの、という ものは怪しい、と…

SFの文体とそれぞれ独自の視点:ホワード・ヒューズに ー控え目な提案ー ジョー・ホールドマン

国部宏之・訳 「SF戦争10のスタイル」所収。 講談社文庫 1974年 この本書の大トリはジョー・ホールドマンです。 このジョー・ホールドマンと云う人は、大富豪であり、この 短編でも大富豪が核ジャックをして、国を脅すと云う 趣向になっております。 …

経歴不明の謎の作家:平和このうえもなし ウィリアム・ネイバーズ

黒丸尚・訳 「SF戦争10のスタイル」所収。 1974年 この人に関しては、経歴その他よく分からないらしい。独特の 世界観に、唯一無二の文体。なんか耽溺してしまう この短篇に、無名性というものを加味させると、 よりこの文学作品が楽しめるような気が…

ヘミングウェイ並みにすごい人生を送った作家:傭兵マウザー マック・レナルズ

風見潤・訳 「SF戦争10のスタイル」所収。 1962年 主人公ジョー・マウザーを主人公にした長編は 三作あるという。 カーストから逃れるために、なにやら致すらしいが、 これまた、戦争がテーマなのは当然として、なんか 淡々と進んでいくという印象。 …

イキイキとした会話:カーテン ジョージ・アレク、エフィンガー

白川星紀・訳 「SF戦争10のスタイル」所収。 1974年 橋を破壊する任務を負った男が辿る運命。 これも戦争そのものを描いていて、兵士の 会話が生々しく、イキイキとしている。 なんてことのない会話だが、とても重要で、し かも、本来はそれは、当然の…

文物としての戦争の魅力:奇襲作戦 ハリー・ハリソン

岡部宏之・訳 「SF戦争10のスタイル」所収。 1970年 この小品は戦争の奇襲そのものを克明に描いた もので、M‐16ライフルなどから、ヴェトナムなの かな、とも思う。 ハリー・ハリソンは国際主義者だそうだが、 男ってこういう戦争って意外と好きなん…

SF小説の魅力にやられる:暗殺者 ポール・アンダースン

海匂真理子・訳 「SF戦争10のスタイル」所収。 僕はずっと、この手の文体の小説を避けて 来たのだけれど、こう接してみると、なか なかにして、読書というものの奥深さを知る ことになった。 暗殺について描かれているが、ホントのことを 言うとよくは分か…

リアルとヴァーチャルが混然一体:決闘機械 ベン・ボーヴァ

酒匂真理子・訳 「SF戦争10のスタイル」所収。 ほっぽり出した積りが気になって読みだしたら、 なかなか面白い。リアルとヴァーチャルが混然一体 となって、決闘というひとつの目的の為に、戦争を 起こす。決して死ぬことはないという決闘だが、 ラスト…

暴力描写と想像力の斜め上、エリスンの文体を解剖する:バシリスク ハーラン・エリスン

深町真理子・訳 「SF戦争10のスタイル」所収。 いつものエリスンの文体で攻めて来る。 暴力描写に満ちていて、想像力の斜め上をゆく。 エリスンの文体は、よくわからない、という特徴 があるが、ぼくもこれを一読して、うおっ、と 思ったが、よく分から…

ノルウェー人のサスペンス作品:ロゼアンナ マイ・シューヴァル、ペール・ヴァールー

高見浩・訳 角川文庫 1965年 ヴァールー=シューヴァルとは夫婦であり、 ノルウェーの人ということだ。ノルウェー人の お作品を読むことになろうとは思わなかった。 カフカという米人の助けを借りて、そう書いて あったので、アメリカから馳せ参じるのか…

垂直の死海 森村誠一

青樹社文庫 昭和58年 冒頭、ヘッセの詩なんかがのっていて、すごく 文学的に始まる。それが、菱星(りょうせい) 自動車の不正部品を使ったクルマによる事故死 から、その未亡人に頼まれて、千野順一は 事件に巻き込まれてゆく。大会社による資本 の犯罪と…